ハラスメント対策として、相談窓口を社外の専門家に委託する企業が増えています。
そこでよく聞かれるのは、「顧問の社会保険労務士に、外部相談窓口も兼ねてもらってよいのか」というギモンです。
法令の要件を満たすことはもちろん大切です。そのうえで、相談する方が安心して声を上げられる体制になっているかも、あわせて考えていただきたいと思います。
兼務は可能?厚生労働省 指針の考え方
厚生労働省の指針では、事業主に次の措置が求められています。
- 相談窓口をあらかじめ定め、周知すること
- 相談者のプライバシーを守るための措置を講じること
相談窓口を外部の機関に委託することも、窓口を定めている例の一つとして示されています。
一方で、労務顧問と外部相談窓口を別々にしなければならない、という定めは指針の中に見当たりません。兼務そのものが直ちに問題になるわけではありませんが、次の点をふまえて体制を整える必要があります。
- 実際にお願いする業務の内容
- 利益が相反するおそれ
- 相談情報の管理方法
分けることで得られる3つの安心
分けることには、法令遵守だけでは測れないよさがあると、私は感じています。
相談する方の心理的負担の軽減
相談する方は、「会社の労務管理を担当する専門家に話して大丈夫かな」「話した内容が会社に伝わって、不利益を受けないかな」と不安になることがあります。窓口と労務顧問を分けておくと、安心して話せる環境を整えやすくなります。
なお、厚生労働省の求職者等セクシュアルハラスメント指針でも、求職者は人事担当者への相談をためらうことが想定されるため、人事担当者以外の者を窓口担当者に指定することも考えられる、とされています。
相談者に寄り添う姿勢の可視化
相談窓口の役割は、相談を受け付けることだけではありません。
お話を丁寧にうかがい、プライバシーに配慮しながら、必要な対応につなげていくことが大切です。
窓口を独立させることは、相談する方の安心を大切にする会社の姿勢を伝える方法の一つになります。
役割分担の明確化
役割を分けると、それぞれの専門性を活かしやすくなります。
- 外部相談窓口:相談の受付と初期対応
- 労務顧問:就業規則の整備、職場環境の改善、再発防止策の検討
窓口を分けたあとに必要な体制づくり
窓口を別に設ければ、それだけでハラスメント対策が整うわけではありません。次の項目を、あらかじめ明確にしておきましょう。
- ✅ 相談内容を、誰に、どこまで共有するのか
- ✅ 事実確認を、誰が行うのか
- ✅ 被害を受けた方への配慮を、誰が担うのか
- ✅ 行為者への対応を、誰が担うのか
- ✅ 再発防止を、誰が担うのか
相談内容を必要な範囲で共有する場合も、相談者のプライバシーへの配慮は欠かせません。また、プライバシー保護の措置を講じていることを周知することも、指針で求められています。
あわせて、相談したことや事実確認に協力したことを理由に、労働者を解雇したり不利益に扱ったりしてはならないとされています。
2026年10月1日から義務化された「就活セクハラ」対策
2026年(令和8年)10月1日から、求職者等に対するセクシュアルハラスメント(就活セクハラ)の防止措置が、すべての事業主の義務になりました。
根拠は、改正男女雇用機会均等法第13条と、令和8年厚生労働省告示第52号の指針です。企業規模にかかわらず、猶予はありません。
対象となる場面は、採用面接や就職説明会、インターンシップだけではありません。OB・OG訪問や、教育実習・看護実習などの実習も含まれます。
採用活動に関わる企業さまは、就活セクハラ外部相談窓口の活用も含め、相談体制をあらためてご確認ください。
まとめ:声を上げやすく、声を上げたあとも安心できる仕組みを
外部相談窓口と労務顧問を分けることは、すべての企業に義務づけられているわけではありません。それでも、相談する方の不安を和らげ、体制への信頼を高めるために、検討する価値のある選択肢だと考えています。
大切なのは、窓口をつくること自体をゴールにしないことです。相談する方が安心して声を上げられ、相談したあとも適切な対応につながる。そんな仕組みを整えていきましょう。
窓口の設計から、ハラスメント規定を含めた就業規則の整備、採用・定着支援顧問による採用活動全体のサポート、就活セクハラ外部窓口まで、会社の規模や組織体制に合わせてご一緒に考えます。どうぞお気軽に、当事務所へご相談ください。
参考(厚生労働省)
- 職場におけるハラスメントの防止のために(令和8年10月1日義務化のご案内)
- 事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号)
- 事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和8年厚生労働省告示第52号)
AC社会保険労務士事務所をもっと見る
購読すると最新の投稿がメールで送信されます。
