2026年10月1日、改正男女雇用機会均等法により、事業主には求職者等に対するセクシュアルハラスメント(以下「就活セクハラ」)を防止する措置が義務付けられます。均等法に新たに第13条が設けられ、これまで自社の労働者のみを対象としてきたセクハラ防止義務の対象が、初めて「求職者等」にまで広がります※1。
対象は採用面接だけではありません。就職説明会、インターンシップ、OB・OG訪問、SNSでのやり取りまで幅広く含まれ、企業規模による猶予もありません※2。
すべての事業主が対応を迫られています。
就活セクハラとは?なぜ今、企業の対応が必要なのか
厚生労働省・文部科学省の調査によると、2026年4月1日現在の大学生の就職率は98.0%※3。
学生が「選ばれる」だけでなく「選ぶ」時代になっています。企業を選ぶ際、学生は待遇だけでなく「安心して相談できる職場か」「入社後にキャリアを描けるか」も見ています。
一方、厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」では、就活セクハラ対策に「一定の取組をしている」企業は24.7%にとどまり、「取り組んでいない」が44.6%を占めます※4。
企業規模が大きいほど対応が進んでいる傾向もあり、中小企業ほど準備が遅れがちな現状がうかがえます。
就活セクハラ防止措置として企業に求められる主な対応
厚生労働省の指針(令和8年厚生労働省告示第52号)では、企業に次のような措置が求められます※1。
- 就活セクハラを行ってはならないという方針の明確化・周知
- 面談時間・場所、使用するSNSなど、求職活動等に関するルールの明確化
- 相談窓口の設置と周知、相談後の事実確認・再発防止
- 相談者・行為者等のプライバシー保護、相談したことによる不利益取扱いの禁止
大切なのは「相談窓口を作れば終わり」ではない点です。学生が実際に相談しやすい窓口になっているか、相談が選考に不利益をもたらすのではという不安を抱かせないか、運用面まで設計する必要があります。
なお、圧迫面接やいわゆる「オワハラ」、不適切な質問なども就活の場でしばしば問題になりますが、今回の均等法改正で義務化されるのは「求職者等セクハラ」に限られる点にも注意が必要です※5。
就活セクハラの相談窓口は「社内」か「社外」か
相談窓口は社内に設けることも可能ですが、採用活動においては社外窓口ならではのメリットもあります。
- 学生が相談しやすい:採用担当者とつながる社内窓口では「相談したら選考に響くのでは」という不安が生まれがちです。企業と独立した外部窓口は、その心理的ハードルを下げます。
- 担当者だけで抱え込まない:「これは問題なのか」の判断に迷うケースでも、外部の専門家が初期対応し事実関係を整理した上で企業に報告する仕組みがあれば、採用担当者だけで抱え込まずに済みます。
「困ったときに相談できる窓口がある」という情報は、単なるリスク管理を超えて、学生への安心のメッセージにもなり、採用ブランディングの一部にもなります。
就活セクハラ対策を「採用の軸」として定着させるには
学生に「就活の軸を持ちましょう」と伝えるように、企業にも「私たちは、どのような企業として学生から選ばれたいのか」という採用の軸が必要です。
その軸を実践に落とし込むには、次の3ステップが有効です。
- 方針を文書化する――理念を就業規則や採用ガイドラインなど、実際に参照される形に落とし込む
- 行動ルールに変換する――面談のルール、社員と学生の適切な距離感など、具体的な行動レベルに落とし込む
- 関わる人全員に浸透させる――採用担当者だけでなく、面接担当者、リクルーター、OB・OGまで共有する
採用活動の段階で大切にしている価値観と、入社後に経験することがかけ離れていれば、早期離職にもつながります。「採用すること」だけをゴールにせず、入社後の定着まで見据えて採用活動を設計することが、これからますます重要になります。
2026年10月の法改正は、そのための一つのきっかけです。「会社が学生を選ぶ」だけでなく「学生から会社が選ばれる」――その視点を、ぜひ自社の採用活動の見直しに役立ててください。学生から選ばれていることを客観的に示す方法として、社労士診断認証制度などの仕組みを活用するのも一つの選択肢です。
就活セクハラ対策、何から始めればいいか迷ったら
「うちは何から手をつければいいのか分からない」「相談窓口を作りたいが、運用まで手が回らない」というお声をよくいただきます。
当事務所では、社会保険労務士・キャリアコンサルタントの視点から、就活セクハラ外部窓口顧問サービスとして、方針の文書化、ルール整備、相談窓口の設計・運用をご支援しています。まずは自社の現状を確認したいという方も、お気軽にご相談ください。
出典・参考資料
※1 厚生労働省「事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第52号) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/danjokintou/index.html
※2 改正男女雇用機会均等法第13条(令和7年6月公布、令和8年10月1日施行)
※3 厚生労働省・文部科学省「令和8年3月大学等卒業者の就職状況(4月1日現在)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000184815_00065.html
※4 厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」
※5 就活ハラスメントにはセクハラのほか圧迫面接・オワハラ・不適切な質問等も含まれるが、2026年10月の均等法改正で新たに義務化されるのは「求職者等セクハラ」の防止措置に限られる。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案における法的判断を行うものではありません。自社の状況に応じた具体的な対応については、お気軽に当事務所までご相談ください。
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