―人手不足の中でも、安心して育休を取れる職場づくりを―
2024年1月に新設された「両立支援等助成金(育休中等業務代替支援コース)」
をご存じでしょうか。
すでに施行から2年弱がたっていますが、利用する事業者はまだまだ少ないようです。
育児休業や短時間勤務を取得する社員が増える一方で、その業務を誰が代替するのか、
職場の体制づくりに悩む企業は少なくありません。
この助成金は、まさにそうした事業主を支援するための新しい制度です。
制度の目的と背景
厚生労働省が掲げる育児・介護休業法改正(2025年4月・10月施行)では、
「仕事と育児の両立」を一層推進する方針が示されています。
人材不足が深刻化する中、従業員が安心して育児休業を取得できる環境整備は、企業の持続的な成長にも直結します。そこで国は、中小企業が代替要員の確保や業務分担の見直しを行う際の負担を軽減するため、この助成制度を設けました。
支給の対象と内容
対象となるのは、中小企業で育児休業や短時間勤務制度を利用する社員が出た場合に、
業務代替のための体制整備を行ったケースです。大きく分けて次の3つの取組に助成されます。
- [1] 手当支給等(育児休業):周囲の社員に代替手当を支給した場合
- [2] 手当支給等(短時間勤務):短時間勤務社員の業務を代替した場合
- [3] 新規雇用(育児休業):代替要員を新規採用(派遣受入含む)した場合
支給額は取組内容により異なりますが、例えば「新規雇用」の場合は
代替期間に応じて9万円〜67.5万円(プラチナくるみん認定企業は最大82.5万円)を受け取ることができます。
さらに、有期雇用労働者を対象とした場合は10万円、育児休業の取得状況を公表した場合は2万円の加算もあります。
助成金を受けるための要件
申請には次のような条件を満たす必要があります。
- 育児休業または短時間勤務制度を就業規則等に明記している
- 育児休業取得者の業務を代替する社員に対し、賃金制度上の手当を支給している
- 業務効率化のための見直し(業務の一部休止・マニュアル作成等)を行っている
- 一般事業主行動計画を策定し、労働局に届け出ている
- 育児休業取得者を原職等に復帰させ、3か月以上継続雇用している
一見すると手続きが複雑に感じるかもしれませんが、
要は「育児休業を職場全体で支える仕組み」を整えているかどうかがポイントです。
社労士からの実務アドバイス
この助成金は、制度導入の初期費用や人件費補填に役立つだけでなく、職場の風土改革にもつながります。たとえば、業務を属人化させず共有化することで、休業者の復職もスムーズになります。
また、代替者に正当に報いる仕組みを整えることで、チームの納得感と信頼関係も高まります。
育児休業を取る社員が「迷惑をかける」と感じず、
同僚も「頑張りを認めてもらえる」と思える環境づくり――それこそが、助成金の本当の狙いです。
まとめ
両立支援等助成金(育休中等業務代替支援コース)は、育休取得を後押しするだけでなく、働きやすい職場を実現する重要な仕組みです。申請には就業規則の整備や行動計画の届出など専門的な準備が必要なため、社会保険労務士にご相談いただくことで、スムーズな導入が可能になります。
育休を「制度」から「文化」へ。
両立支援の第一歩を、今こそ踏み出しましょう。

