厚生労働省のデータと企業が直面する課題
少子化の進行や若者の就業意識の変化により、新卒者の採用を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。厚生労働省が公表している資料でも、企業が新卒採用に苦戦している実態と、その背景にある構造的な課題が示されています。
今回は、厚生労働省の公表資料をもとに、新卒採用において企業が直面している主な課題を整理します。
1.若年労働力人口の減少という構造的課題
最大の前提条件は、新卒採用の母数そのものが減少しているという事実です。少子化の影響により、学校卒業者数は中長期的に減少傾向にあり、企業間での人材獲得競争は避けられません。
その結果として、
- これまで採用できていた人数を確保できない
- 採用活動が長期化・高コスト化する
といった問題が生じています。
2.「仕事内容」と「処遇」のミスマッチ
厚生労働省の資料では、学生と企業の間にある認識のずれも重要な課題として示されています。
学生側の傾向
- 仕事内容が具体的にイメージできない企業を避ける
- 長時間労働や転勤の有無に敏感
- 初期配属やキャリアの見通しを重視
企業側の課題
- 仕事の魅力や成長プロセスを十分に言語化できていない
- 「入社後に分かる」という説明にとどまっている
このギャップが、応募者不足や内定辞退につながっているケースも少なくありません。
3.働き方・職場環境への関心の高まり
近年の学生は、賃金だけでなく、
- ワーク・ライフ・バランス
- 育児・介護と仕事の両立
- ハラスメント防止体制
といった労働環境全体を重視する傾向が強まっています。
厚生労働省の調査でも、
働きやすさに関する情報開示や制度整備が、企業選択に影響していることが示されています。
制度が整っていても、
- 情報発信が不足している
- 実際の運用が見えにくい
場合、学生には十分に伝わりません。
4.中小企業における情報発信力の課題
特に中小企業では、
- 知名度の低さ
- 採用専任担当者の不在
- 採用広報にかけられる時間・資源の不足
といった要因から、新卒者に企業の魅力が届きにくいという課題があります。
厚生労働省も、中小企業ほど新卒採用に課題を抱えやすい点を指摘しています。
5.これからの新卒採用に求められる視点
厚生労働省の資料から読み取れるのは、
「人が集まらない」のではなく、
「企業のあり方が問われている」という点です。
今後の新卒採用では、
- 仕事内容・キャリアの見える化
- 働き方や労働環境の丁寧な説明
- 学生との双方向コミュニケーション
が、これまで以上に重要になります。
おわりに
新卒採用が難しい時代は、
裏を返せば、企業の姿勢や価値観が、より丁寧に見られる時代でもあります。
社労士・キャリアコンサルタントの立場からお伝えしたいのは、
「きちんと向き合おうとしている会社」は、
必ず、どこかで学生に伝わる
ということです。
制度を整えることも大切ですが、
それと同じくらい、人としてどう関わろうとしているかが問われています。
小さな工夫の積み重ねが、これからの新卒採用を、少しずつ変えていくはずです。
※厚生労働省 令和7年度大学等卒業予定者の就職内定状況調査(令和7年12月1日現在) 令和5年若年者雇用実態調査の概況 参照。
