“理由を説明できる処遇”が、これからの安心につながります
2025年11月21日、労働政策審議会の部会において、同一労働同一賃金ガイドラインの見直し案が示されました。
働き方が多様化し、「働く時間」「役割」「責任の範囲」が従来よりも幅広くなってきた今、企業がこれらの違いを丁寧に説明し、働く人が納得できる仕組みを整えていくことが求められています。
同一労働同一賃金の基本的な考え方
同一労働同一賃金のルールは、「正社員かどうか」ではなく、仕事の内容や責任が同じであれば、できるだけ納得感のある待遇にしましょうという考え方に基づいてつくられています。ガイドライン見直し案では、賃金・賞与・手当だけでなく、福利厚生や教育訓練まで幅広く取り上げられ、どのような差が“合理的”かが示されています。
たとえば、基本給や昇給については、能力・経験・成果などの趣旨に応じて支給することが原則で、仕事内容やスキルが同じであれば同じ扱いになります。役職手当や特殊勤務手当、通勤手当なども、同じ要件を満たしていれば同じ支給が必要とされています。
事業主の皆さまが押さえておきたいポイント
今回のガイドラインで特に重要なのは、待遇差の「理由」がしっかり説明できるかどうかという点です。
「正社員と非正規では期待が違うから」というような抽象的な説明では不十分で、
- どんな職務を担っているか
- どれくらい配置転換があるか
- 責任の重さはどうか
といった“実際の働き方”に基づいた根拠が必要になります。
また、総合職や地域限定正社員など複数の区分がある場合でも、それぞれの区分ごとに不合理な差がないかを確認する必要があります。職務を分けていても「説明できるかどうか」が問われる点は変わりません。
さらに、定年後に再雇用した場合も、同法が適用されます。「定年後だから安くてもよい」という一律の扱いではなく、他の条件と合わせて総合的に判断されます。
働く人にとってのメリット
従業員にとっては、雇用形態によらず「自分の仕事が正しく評価されている」と感じられる機会が増えます。教育訓練や福利厚生も、同じ要件であれば同じように利用できるため、スキルアップの機会が広がり、働く環境の安心感にもつながります。
こうした環境整備は、結果として企業への信頼や定着にも良い影響をもたらします。
待遇差の整理は、“制度の棚卸し”
企業の皆さまにとっては「どこから手をつければよいかわからない」「うちは不合理なのか、合理的なのか判断が難しい」と悩む点が多いと思います。
まずは、自社の手当・評価・昇給ルールを“棚卸し”することが第一歩です。手当の趣旨や支給要件、評価の考え方などを一度整理し、「なぜその制度になっているのか」を言語化することで、説明のしやすさと制度の見直しポイントが見えてきます。
制度設計は企業ごとに事情が異なるため、一律の正解はありません。
だからこそ、実情に合わせながら、無理のない形で整えていくことが大切です。
社労士としては、職務整理や就業規則の更新等のサポートを通じて、
“説明できる処遇”が企業の安心につながるようお手伝いすることを大切にしています。
- 参考 厚生労働省 同一労働同一賃金特集ページ
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190591.html
