― 今こそ制度の“棚卸し”を ―
厚生労働省は、同一労働同一賃金ガイドラインの見直し方針を示しました。
正式名称は、「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」です。
今回の改正は「まったく新しい義務が増える」というより、これまで曖昧だった部分が、より具体的に整理されるという内容です。
しかし、実務への影響は小さくありません。今のうちに落ち着いて確認しておきたいポイントを整理します。
今回の見直しのポイント
① 住宅手当・家族手当・退職手当の考え方が明確に
これまで具体例が十分ではなかった
- 家族手当
- 住宅手当
- 退職手当
について、原則的な考え方や「問題となり得る例」が追加される予定です。
ポイントはシンプルです。
雇用区分ではなく、“職務の実態”で判断する。
たとえば、
- 継続的な勤務が見込まれる場合の家族手当
- 転居を伴う配置変更がある場合の住宅手当
などは、正社員かどうかではなく、役割や責任の内容で整理する必要があります。
② 賞与は“貢献度”との整合性が問われる
賞与が会社への貢献に応じて支給されるものであれば、同様の貢献がある場合、その支給の考え方に合理性が求められます。
✔ 評価基準は明確ですか?
✔ 雇用区分による違いを説明できますか?
ここが重要になります。
③ 待遇差の「説明方法」がより明確に
待遇差について労働者から説明を求められた場合、
- 資料を活用して口頭で説明
または - 説明事項を記載した資料を交付
という形での対応が想定されています。
つまり、
「説明できる制度」になっているかどうか
が問われます。
背景にある社会の変化
最新の「令和6年度雇用均等基本調査」では、
- 女性の育児休業取得率:86.6%
- 男性の育児休業取得率:40.5%
と、男性の取得率も大きく伸びています 結果働き方は、明らかに多様化しています。
参考:厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」
ライフステージに応じて、正社員 → 短時間勤務 → 有期契約 → 再雇用 と変化するケースも増えています。
これからの労働環境は、「雇用区分」ではなく「役割と責任」で整理することが前提になります。
経営者の皆さまへ
今回の見直しは、「今すぐ大きく変えなければならない」という話ではありません。
しかし、次の3点は早めに確認しておきたいところです。
- 手当の趣旨は明確ですか?
- 評価基準は言語化されていますか?
- 将来、説明を求められても困らない状態ですか?
法改正直前に慌てるよりも、今のうちに少しずつ整理する方が、結果的に負担は軽くなります。
今回のポイント整理
― 制度は「理念」ではなく「運用」で決まります ―
最後に、現場支援を続けてきた立場から、3つだけお伝えします。
① 「払っているか」ではなく「説明できるか」
同一労働同一賃金は金額の問題ではありません。理由の問題です。
- なぜ支給しているのか
- なぜ差があるのか
ここが言語化できていれば、大きなトラブルにはなりにくい。「昔からこうだから」は、これからは通用しにくくなります。
② 雇用区分よりも“役割”で整理する
正社員・パート・有期。名称に引きずられると制度は複雑になります。
本当に問われるのは、
- 職務内容
- 責任の範囲
- 配置変更の可能性
ライフステージが変わっても納得できる制度かどうか。ここが、これからの労働環境の軸です。
③ 今回は「制度を磨くチャンス」
法改正は、負担ではありません。
- 評価制度を整える
- 手当の趣旨を整理する
- 採用・定着戦略とつなげる
ここまでできれば、単なる法対応ではなく、経営の質を高める取り組みになります。
まとめ
同一労働同一賃金の本質は、「同じにすること」ではなく、納得できる労働環境をつくることです。早めに整える企業ほど、人が集まり、定着し、信頼が積み重なります。
制度は静かに会社の文化をつくります。
10月施行を見据えて、一度、自社の制度を丁寧に見直してみませんか。
参考:厚生労働省 同一労働同一賃金ガイドライン(概要)
