〜知らずに損をしないために、企業にもできるサポートを〜
日本で働いたあと、母国へ帰国する外国人の方にとって、日本年金機構の「脱退一時金」はとても大切な制度です。
これは、日本の年金制度(国民年金・厚生年金保険など)に加入していた外国人が出国する際、一定の条件を満たせば受け取ることができるお金です。
せっかく納めた保険料ですから、制度を知らずに申請しないままではもったいないですね。
脱退一時金とは
「脱退一時金」とは、日本国籍を持たない方が、日本の年金制度の被保険者資格を喪失し、日本を出国した場合に請求できる給付金です。
申請期限は出国の翌日から2年以内です。
脱退一時金の主な要件(日本年金機構より)
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 国籍 | 日本国籍を持たないこと |
| 年金加入 | 国民年金・厚生年金保険などの被保険者であったこと |
| 資格喪失 | 出国により被保険者資格を喪失していること |
| 居住状況 | 日本国内に住所を有していないこと |
| 申請期限 | 出国日の翌日から2年以内に請求すること |
| その他 | これまでに老齢年金などを受給していないこと |
👉 詳細はこちら:日本年金機構「脱退一時金」案内ページ
手続きにあたって
手続き前の重要なポイントは、外国人労働者が帰国する場合に一時金が受け取れるか、事業主・労働者双方で確認しておくことです。
手続きの流れ(概要)
- 脱退一時金請求書を記入(多言語対応の様式あり)
- 必要書類を添付:パスポート、年金手帳または基礎年金番号通知書、住民票の除票(転出証明)、受取口座証明など
- 日本年金機構へ郵送または電子申請(e-Gov)
※ 受取口座は本人名義でカタカナ登録が必要(ゆうちょ銀行・一部ネット銀行は不可)
脱退一時金の説明を行う(資料付き)
外国人労働者にわかりやすい資料を渡すことも大切です。下記は脱退一時金の説明書類です。言語ごとにご活用ください。
脱退一時金_ベトナム語 脱退一時金_中国語 脱退一時金_フィリピノ・タガログ語
脱退一時金_ミャンマー語 脱退一時金_インドネシア語 脱退一時金_ネパール語 脱退一時金_英語
制度を知らずに終わってしまうケースも
実はこの制度、外国人労働者の方々の間であまり知られていません。
私自身も、昔1年ほど韓国で日本語講師として働いていたことがありますが、
そのときに支払っていた税金や保険料は払いっぱなしで、戻ってくることはありませんでした。
今思えば、もしかしたら脱退一時金のような制度があったのかもしれません。
外国で働くと、言語や制度の壁があり、情報が届かないままになってしまうことが多いのです。
だからこそ、外国人の方々には日本に良い印象を持ち続けてほしい、そしてまたご縁があることを願っています。
ライフステージの転換を支える制度として
脱退一時金は、単なる「払い戻し制度」ではなく、
日本での就労を終え、新しいライフステージへと移る外国人の方を支えるための仕組みです。
制度の周知とサポートを通じて、
外国人社員が「日本で働いてよかった」と感じてもらえるような職場環境を整えていくことが、
結果的に企業の国際的な評価や採用力の向上にもつながります。
社労士として、事業主の皆さまへ
外国人労働者を雇う企業では、退職後や帰国時のアフターケアが信頼を左右します。
例えば以下のようなサポートが可能です。
- 帰国前に「脱退一時金制度」があることを案内する
- 年金手帳・基礎年金番号を確認しておく
- 転出証明書の取得方法を説明する
- 「出国後2年以内に申請が必要」であることを伝える
こうした配慮は、外国人社員が安心して帰国できるだけでなく、
企業にとってもコンプライアンスの強化と国際的な信頼向上につながります。
そして、実はこの脱退一時金の申請手続きは、社会保険労務士に依頼することも可能です。
外国人社員に代わって申請書類の作成や確認を行い、
企業が安心して外国人を雇用・送り出すための「専門パートナー」として、適切に受給できるようサポートすることで、企業の負担も軽減できます。
まとめ
脱退一時金は、外国人労働者が日本で働いた期間を支える大切な制度です。
事業主の立場からも、退職・帰国後のサポートを行うことで、
「きちんとした対応をしてくれた会社」という好印象が残ります。
帰国が決まった外国人社員には、ぜひ一言
「脱退一時金という制度がありますよ」
と伝えてください。
その一言が、日本と外国人労働者をつなぐ“信頼の架け橋”になるかもしれません。

