― 毎日の通勤負担を軽減。企業が今対応すべきポイントを解説 ―
通勤費は、従業員が毎日必ず支出する費用であり、生活に直結する大切な項目です。
企業としても、働く人の生活を支えるという視点から、通勤手当に関する制度変更には慎重かつ丁寧な対応が求められます。
今回の改正は、特に地方や車通勤が多い職場に大きく影響するため、改定内容・実務上の注意点・対応すべきポイントをわかりやすく整理します。
改正のポイント
この改正は、令和7年11月20日に施行され、令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当(同日前に支払われるべき通勤手当の差額として追加支給するものを除きます。)について適用されます。
つまり、2025年(令和7年)4月1日以後に支払われる通勤手当から、自動車・自転車等で通勤する場合の非課税限度額が引き上げられ、改正前に、改正前の非課税限度額を超えた通勤手当を支払っていた場合には、令和7年分の年末調整で対応が必要となることがあります。
対象となるのは「自動車・自転車で通勤している人」
交通機関(定期代等)の非課税枠〔上限150,000円/月〕は変更なしです。
自動車・自転車通勤の非課税限度額(図表)
2025年4月以降の非課税限度額は以下のとおりです。
【1か月あたりの非課税限度額(2025年4月〜)】
| 片道距離 | 新(2025/4〜) | 旧 | 増額幅 |
|---|---|---|---|
| 55km以上 | 38,700円 | 31,600円 | +7,100円 |
| 45〜55km未満 | 32,300円 | 28,000円 | +4,300円 |
| 35〜45km未満 | 25,900円 | 24,400円 | +1,500円 |
| 25〜35km未満 | 19,700円 | 18,700円 | +1,000円 |
| 15〜25km未満 | 13,500円 | 12,900円 | +600円 |
| 10〜15km未満 | 7,300円 | 7,100円 | +200円 |
★ 特に長距離通勤者の負担軽減につながる改正
★ 車通勤の多い業種(介護・製造・物流・小売・教育など)は影響大
(参考:国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げに関するQ&A」)
適用時期の注意点
“支払われるべき日”が基準
実際に支給した日ではなく、下記の例のように、給与規程で定められた支給日が判定基準となります。
- 4月10日に「3月分」を支給 → 旧ルール(改正前)
- 3月10日に「4月分」を前倒し支給 → 新ルール(改正後)
遡及(さかのぼり)支給をした場合
給与規程を改定して4月1日に遡って通勤手当を増額した場合、
遡及の差額分にも新しい非課税限度額が適用されます。
年末調整での精算も可能です。
実務で必要な企業対応
今すぐ確認すべきポイントをまとめました。
【企業が行うべき対応チェックリスト】
- □ 給与規程の通勤手当の条文を改定
- □ 従業員の通勤距離(片道キロ数)を再確認
- □ 給与計算ソフトの設定を更新
- □ 遡及支給が必要か判断
- □ 従業員への案内文を作成
- □ 年末調整時の処理を確認
従業員の生活に関わる項目であるため、最新情報を正確に共有することが重要です。
まとめ
- 2025年4分から、自動車・自転車通勤の非課税限度額が引き上げられる
- 長距離通勤の従業員ほど恩恵が大きい
- 判定は「支払われるべき日」で判断
- 遡及支給も新ルールで計算
- 規程改定・給与計算設定の変更など企業対応が必須
通勤手当は、毎日の「生活費」に直結する項目です。
適切な制度運用は従業員の安心につながり、企業全体の信頼性にも影響します。

