こんにちは。
令和7年6月11日に公布された法改正により、「カスタマーハラスメント」と「就活セクシュアルハラスメント(就活ハラ)」に対する事業主の責務が、いよいよ“努力義務”から“義務”へと強化されることになりました。
これは大企業だけでなく、中小企業も対象です。
今回は、この2つの新たな対応義務について、分かりやすくお伝えします。
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは
カスタマーハラスメントの3要件
「お客様は神様」──そう考えるのが当たり前だった時代もありました。
けれど、近年増えているのが、行き過ぎたクレームや悪質な要求など、従業員を傷つける言動です。これが「カスタマーハラスメント(カスハラ)」と呼ばれるものです。
改正では、カスタマーハラスメントを次の3要件で定義しています:
- 顧客・取引先などの利害関係者による言動であること
- 社会通念上許容される範囲を超えていること
- 労働者の就業環境を害すること
つまり、「お客様の言動」であっても、それが過度であればハラスメントと認定され、事業主に対応義務が課せられるのです。
企業において必要な措置
これに伴い、今後は企業において、以下のような措置が必要になります:
- カスハラ防止の方針の策定と周知
- 相談窓口の整備
- 発生時の迅速な対応と再発防止策の実施
⚠ 注意点:顧客対応に制限がかかるという懸念もありますが、改正では「消費者の正当な権利を阻害しないこと」や「障害者差別解消法の合理的配慮」も前提とされています。バランスが重要です。
法改正では、次のようなケースが対象になります:
- 顧客や取引先からの暴言や威圧的な態度
- 土下座の強要、長時間の叱責
- プライベートへの執拗な干渉 など
従業員が安心して働ける環境を整えることは、事業主としての責任です。これからは、こうしたカスハラに対して、会社として「どう対応するかの方針を定め、相談窓口を設け、再発防止に努めること」が義務となります。
就活ハラスメント(就活ハラ)への対応義務
学生や求職者へのセクハラ防止体制の強化
学生や求職者(インターンシップ参加者など)に対するセクシュアルハラスメント防止も、今回の改正で新たに「事業主の義務」とされました。いわゆる「就活セクハラ」が対象です。
たとえば、次のような行為があった場合、相手が学生であっても、企業側に防止措置の義務が発生します。
- 外見や恋愛経験に関する質問
- プライベートな連絡先の聞き出し
- 不快な言動や身体的接触
企業において必要な措置
今後、企業側にはは以下の措置が求められます。:
- 面談や面接時のルール整備・周知
- 被害を受けた場合の相談体制の構築
- 発生後の迅速かつ適切な対応(例:謝罪、再発防止)
特に、インターンや新卒採用を行っている企業は、採用担当者や面接官がきちんと対応できるようにルールや教育を整えておくことが求められます。
プラチナえるぼし認定の要件にも、「就活ハラ防止措置の公表」が加えられる予定であり、企業の姿勢がますます問われる時代となります。
社労士として企業に伝えたいこと
「そんな大げさなこと、うちには関係ない」と思われるかもしれません。
しかし、従業員が安心して働ける環境を整えていくことは、定着率・採用力の向上にもつながる“未来への投資”です。
まずは、以下のステップからはじめてみてください:
✅ カスハラや就活ハラに関する社内方針を明文化する
✅ 簡単でもよいので、相談できる体制を整える(相談窓口の担当者を決めておく)
✅ 面接や接客時の対応について、社内で注意事項を共有する
✅ 社労士など外部の専門家に相談する
今回の法改正は、単なるコンプライアンス強化ではなく、職場の安心感と信頼を守る施策として非常に重要です。特にカスタマーハラスメントについては、「対応しないこと自体がリスク」となり得る時代に入りました。
社労士としては、次のようなサポートを通じて企業に寄り添っていきたいと考えています:
- ハラスメント防止規程や対応フローの整備支援
- 社内研修・従業員教育の企画・実施
- 相談窓口の設計と外部相談窓口の提供
- 企業のハラスメント対応ポリシー策定支援
さいごに
今回の改正は、公布から1年半以内の施行予定となっています(施行日は政令で定める)。つまり、令和8年末頃までには対応が必須になる見込みです。
「そのうち対応すれば…」ではなく、今から準備を始めておくことで、リスクを最小限にし、社員も顧客も安心できる環境を整えていきましょう。
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