2025年度から、遺族年金制度の大幅な見直しが行われます。
今回の改正では、「遺族厚生年金」と「遺族基礎年金」について、性別や家庭状況にかかわらず、より公平で実情に合った制度に整えられることが目的です。
改正のねらい
この見直しには、以下のような背景と目的があります。
- 女性の就業率上昇や家庭の多様化に対応し、
遺族厚生年金を男女問わず公平に支給
- 子どもが保護者の事情に左右されることなく、安定した支援を受けられる仕組みを整備
改正① 遺族厚生年金――“男女の不平等”を是正へ
これまで、遺族厚生年金は「子のある妻」に重点を置いて支給されてきましたが、男女ともに支給対象としつつ、以下のような見直しが行われます。
主な変更点
- 18歳未満の子がいない20〜50代の配偶者(男女とも)を対象に、「原則5年」の有期給付を導入
- 60歳未満の男性配偶者も新たに支給対象に追加
- 有期給付終了後も配慮が必要な場合(低所得など)、最長65歳まで給付継続
- 有期給付に対して新たに加算制度を設ける
- 収入要件(850万円超)の撤廃
- 女性だけに支給されていた「中高齢寡婦加算」を段階的に縮小・廃止(25年かけて)
影響を受けない方
- すでに受給権がある方
- 60歳以上の高齢の方
- 子ども(18歳未満)のいる20~50代の配偶者
改正② 遺族基礎年金――子どもが受給しやすい制度へ
現在、子どもが遺族基礎年金を受け取るには、「親と生計を同じくしていた」ことが条件です。しかし実際には、保護者が再婚したり、親権が変更されたりすることで、子ども自身の意思とは関係なく受給できなくなるケースがありました。つまり、これまでは「親が年金を受けられないから、子どもももらえない」といったケースが、「親の状態に関わらず、子ども自身が年金を受け取れる」ようになる、ということです。
主な見直しポイント
- 親の再婚や養子縁組などの事情で支給停止されていたケースを再検討
- 「支給停止 → 支給可能」となるパターンを拡大
たとえばこんな場合も対象に:
- 配偶者が子どもの生計を維持しながら再婚した
- 養子縁組をして直系の血族または姻族となった
- 両親が離別後、死亡した元配偶者の子を引き取った
このような場合でも、子どもが遺族基礎年金を引き続き受給できるよう制度が改善されます。
まとめ
分野 | 改正内容 |
---|---|
遺族厚生年金 | 男女ともに支給対象。原則5年の有期給付だが、条件により65歳まで継続可能。 |
遺族基礎年金 | 保護者の再婚や養子縁組によって支給停止されることのないよう見直し。 |
今回の見直しは、性別や家族構成に左右されず、誰もが必要なときに支援を受けられる制度を目指した、大きな一歩です。今回の遺族年金の見直しは、社会の変化に対応し、より公平で、より多くの方にとって安心できる制度へと進化させるためのものです。
- 男女間の受給格差をなくし、誰もが安心して年金を受け取れるように。
- 子どもたちの権利をしっかり守り、不測の事態にも生活が保障されるように。
もしもの時に、残されたご家族が安心して暮らせるよう、遺族年金制度は常に進化しています。今後の動向にも注目しながら、ご自身やご家族の状況と照らし合わせて、制度の活用を検討してみてください。
「私の場合はどうなるの?」「具体的にいつから適用されるの?」といった疑問や、ご自身のケースがどうなるか気になる方は、ぜひ、お近くの年金事務所や社会保険労務士などの専門家にお尋ねください。